SIMULATION LAB ・ ROBOMOVE PROJECT
Simulation Lab

たった3秒の動きに、
全部が詰まってる。

「見て、掴んで、置く」——一見どれも同じ動画。でも技術者の目で見ると、6本はまったく別の顔をしています。このシミュレーション技術ラボでは、Pick & Place の内側で何が起きているのかを、やさしく、でもマニアックに解剖していきます。

V0 ・ TEASER
掴む → 運ぶ → 置く。1サイクルを3秒に凝縮したティザー。
Video Map

6本の動画は、同じタスクの別の顔

すべて「赤いキューブを白い皿に置く」だけの動画です。でも、それぞれが軌道の滑らかさ・サンプリング密度・尺(反復性)・配置精度という違う軸を映しています。まずは全体マップから。気になるカードをタップすると、その解説へジャンプします。

💡 全動画とも 正面カメラ視点・480×480・30fps のシミュレーションレンダリング出力です。自動再生・ループ・ミュートで軽快に流れます。各動画は再生バーで一時停止・巻き戻しもできるので、気になる瞬間はぜひ止めて観てみてください。

§1 Baseline Sequence

まずは通しで。Pick & Place の全工程

V1 ・ robot_demo_20s
STANDARD SEQUENCE

“何が起きているか”を、まるっと一本で。

赤いキューブへの接近 → 降下 → 把持 → 持ち上げ → 搬送 → 白い皿への配置。この一連の流れを等速で観察できる標準シーケンスです。まずはここが基準(ベースライン)。以降の動画は、この動きを色々な角度から作り込んでいきます。

🔬マニアックポイント

これは「状態機械 × 閉ループ制御」の合わせ技

  • タスク層(有限状態機械/FSM)APPROACH → DESCEND → GRASP → LIFT → TRANSPORT → PLACE → RELEASE の状態遷移。各状態は「終了条件」を満たすと次へ進みます(例:グリッパー指幅が閾値を下回ったら把持成立)。
  • モーション層(逆運動学+閉ループ):目標の3次元座標をエンドエフェクタ姿勢に変換し、逆運動学(IK)で各関節角へ。カメラ検出のズレを毎周期補正するビジュアルサーボが土台にあります。

固定座標を再生しているのではなく、「見た結果」で軌道が変わる。ここが従来のティーチング再生型ロボットとの決定的な違いです。

§2 Trajectory Smoothing

なぜ“ぬるっと”動くのか

V2 ・ robot_demo_smooth20s
SMOOTH MOTION

同じタスクなのに、動きの質がまるで違う。

V1と見比べてみてください。こちらは動きの立ち上がり・停止が明らかに滑らか。これは意図的な軌道最適化(trajectory smoothing)の成果です。

V1 標準の動き V2 滑らかに最適化 ← いまここ
🔬マニアックポイント

効いているのは「ジャーク最小化」

  • カクつく動き=ジャーク(加加速度)が大きい=機構への衝撃・振動・オーバーシュートの原因。
  • 滑らかな動き=ジャークを抑えた軌道=把持中の対象ズレを防ぎ、位置決め精度が上がる。

実装上は経由点を5次多項式(quintic)スプラインや時間最適+ジャーク制約で結び、速度・加速度が連続になるよう設計します。「見た目が綺麗」だけでなく、掴んだ物を落とさない・機構を痛めないという実利に直結する、地味だけど超重要な技術です。

§3 Dense Sampling

制御点を“密に刻む”

V3 ・ robot_demo_dense
HIGH-DENSITY WAYPOINTS

“dense(=密)”が語るもの。

ファイル名の dense が示すとおり、軌道を構成する制御点(ウェイポイント)を高い密度でサンプリングしたバージョンです。軌道が“真の曲線”へぐっと近づきます。

🔬マニアックポイント

離散化ステップと制御周波数のせめぎ合い

  • 粗いサンプリング:計算は軽いが、点と点の間を直線で飛ぶため軌道が角張り、衝突回避や精密動作で破綻しやすい。
  • 高密度サンプリング:軌道が真の曲線に近づき追従精度が上がる。反面、IK計算・衝突判定の回数が増え、制御ループの計算コストが跳ね上がる。

つまり dense 版は「精度 vs 計算負荷」というロボティクス永遠のトレードオフを、精度側に振った設定。実機ではこのステップ幅が制御周波数(例:1kHz級)とセットで効いてきます。

§4 Repeatability

“1回できる”と“毎回できる”は別物

V4 ・ robot_demo_dense2 ・ 最長尺
REPEATABILITY & SIM-TO-REAL

長く走り切れることが、完成度の証明。

6本で最も長い動画。連続した動作を通して、システムの安定性・再現性を見せるためのシーケンスです。デモで1回成功させるのは、実はそれほど難しくありません。本当の難所は、何度やっても・条件が変わっても成功し続けること

🔬マニアックポイント

研究の主戦場は「成功率」と「ドメインギャップ」

  • 再現性(repeatability):初期位置や微小な誤差が変わっても、同じ品質で完遂できるか。ここで効くのが前セクションのスムージングと高密度軌道。
  • Sim-to-Real:シミュレーションと現実の差=ドメインギャップをどう埋めるか。物理パラメータ(摩擦・質量・照明・カメラノイズ)をわざと揺らして学習するドメインrandomizationが主流。
  • 長尺 = 累積誤差との戦い:動作が長いほど微小誤差が積み重なる。それでも破綻せず走り切れることが、制御系の完成度の証明になります。

この基盤の価値はここに。実機なら1回数分・破損リスクありの試行を、安全・低コストで何千回も高速反復でき、成功率を統計的に磨き上げられるのです。

§5 Place Phase

“置く”は“掴む”より難しい

V5 ・ robot_demo_place20s
RELEASE CONTROL

リリースの一瞬に、制御が凝縮する。

搬送後、白い皿の上でキューブを解放するプレース(配置)に焦点を当てたバージョン。「置く」が難しい理由は、解放の瞬間に集中しています。

🔬マニアックポイント

接触・力・タイミング・自己評価が一瞬に

  • 接触状態の遷移:把持(力を加える)→ 接地(面が支え始める)→ 解放(開く)という力の受け渡しを、滑らかに行う必要がある。
  • 早すぎる解放=落下・跳ね・位置ズレ/遅すぎる解放=引きずり・押し込みによる転倒。
  • 効いてくるのがコンプライアンス制御(力/インピーダンス制御)。位置を頑固に守るのではなく、接触力を検知して“やわらかく”あたる。人が卵をそっと置くときの力加減の再現です。
  • 最後に成否判定:置いた後にAIが「意図した場所にあるか」を再確認。この自己評価ループが、閉じた自律システムを成立させます。

力覚・タイミング・自己評価が凝縮している——それが分かると、この20秒がまったく違って見えてきます。

Recap

まとめ ― どの技術の話かで観る

同じ動作を「軌道の滑らかさ」「サンプリング密度」「尺(反復性)」「配置精度」という軸で作り分けられること自体が、この基盤がパラメータを制御しながらAIを鍛えられる本格的な開発環境であることの証拠です。

V0 teaser
全体像の一瞬の提示
V1 20s
状態機械 × 閉ループ制御の全工程
V2 smooth
ジャーク最小化による軌道の質
V3 dense
精度と計算負荷のトレードオフ
V4 dense2
再現性と Sim-to-Real、累積誤差との戦い
V5 place
接触・力制御・自己評価が凝縮したプレース

次にこれらの動画を見るときは、ぜひ“どの技術の話をしている尺なのか”を意識してみてください。同じ「赤いキューブを皿に置くだけ」の映像が、まったく違って見えてくるはずです。

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